グリーンランドに行こう
公開日:2020年5月27日 最終更新日:2024年2月12日 Hokuo Guide
北極圏の絶景を見に行こう
その名前には比較的耳になじみがあっても、「詳しい事はよく知らない」という人が多い「グリーンランド」。北緯59度50分~北緯83度37分という高緯度に位置する、日本の数倍以上(日本の面積の約5.7倍)の面積を持つ世界最大の島「グリーンランド」は、地図や地球儀でも北極圏の一部を大きく占めてその存在感を放っていますが、その一方で、どんな場所なのかあまり広くは知られていないという、ちょっと謎の島でもあります。
今日はそんな「グリーンランド」の秘密に迫ってみましょう。
グリーンランドとアイスランド その名前の由来
なぜ緑の多い島が「アイスランド」で、氷に覆われた島が「グリーンランド」なの?
スコットランド、アイルランドなど、世界には「~ランド」と呼ばれる国や場所が幾つもあります。「ランド」は英語やイディッシュ語で「土地」の意味。「スコットランド」なら「スコット人の土地」、「アイルランド」ならば島に住んでいたケルト系民族が自分たちを指していう「エール」を英語風にした「アイルの土地」というのがその名の由来といわれます。
ご存じ、北欧にもとてもシンプルで覚えやすい一方、実際の様子とは些かかけ離れている意味を持つ、二つの「~ランド」と呼ばれる場所があります。そう、「アイスランド」と「グリーンランド」です。それぞれ「氷の土地」「緑の土地」と名付けられたこの二つの場所、実際には「アイスランド」が比較的緑に覆われ(とはいっても勿論ジャングルではありませんが)、「グリーンランド」がその多くを氷に覆われているのです。
緑の多い島が「アイスランド」と名付けられ、氷に覆われた島が「グリーンランド」と名付けられたのはなぜか。その理由を知るためには少し時代を遡らなければならないのですが、その前にそれぞれの場所の地理的環境を含めた詳細を見てみましょう。
「アイスランド」
まずは歴史的にもグリーンランドと深いかかわりのある「アイスランド」ですが、約35万5600人が住むこの島は北極圏のすぐ南、北緯63度から66度の北大西洋上に浮かんでいます。北海道の最北端である宗谷岬が北緯45度なので、かなり北に位置しているのがわかりますが、同程度の緯度に位置するアラスカのフェアバンクスの2月の平均最低気温がマイナス24度であるのに対して、アイスランドはメキシコ湾からやってくる暖流「北大西洋海流」のお蔭で比較的暖かく、例えば首都レイキャビクの2月の平均最低気温はマイナス1度となっています。
さらに、アイスランドはエイヤフィヤトラヨークトルやカトラ火山、ヘクラ火山をはじめ全部で約130に及ぶ火山が島中に点在する「火山島」でもあり、国内の電力供給の約20パーセントを地熱発電で補っているほど地熱が豊富な場所でもあります。そのような理由で「アイスランド」は高緯度にありながら、地衣類やコケ類も含め、比較的緑豊かな場所なのです。
「グリーンランド」
そして今回の主役でもある「グリーンランド」は、アイスランドの北西約300キロメートル、北極海と北大西洋の間にある世界最大の面積を誇る島。その面積は日本の国土の約5.7倍という大きさです。北緯59度50分から83度37分と、そのほとんどが北極圏に位置しており、国土の約80パーセントが万年雪と氷床に覆われている島です。場所によっては厚さ3000メートルにもなる氷で覆われており、全島的にとても寒い所として知られます。
人口1万8千人ほどのグリーンランドの首都・最大都市「ヌーク」の年平均気温がマイナス1.2度、最も暖かい7月の平均気温でも6.8度、グリーンランド全土の過去最低気温は1950年代に記録されたマイナス70度となっています。
では、なぜ緑の多い島が「アイスランド」と呼ばれるようになり、氷で覆われた島が「グリーンランド」と呼ばれるようになったのでしょうか。
まず「アイスランド」ですが、9世紀に、ノルウェーのヴァイキング、フローキ・ビリガルズソンが今のアイスランド島に到達し命名したと伝えられています。彼はガルザル・スヴァヴァルソン(Garðar Svavarsson)というスウェーデンのヴァイキングが発見したという「島」の噂話を聞きつけ、868年に家族や家畜を連れて航海に出ました。シェトランド諸島、フェロー諸島を経由した後、伝説ではワタリガラスを追いかけてアイスランドに到達、島に滞在中に、島の西部にある「イーサフィヤルザルデュープ」という氷に覆われたフィヨルドを見て、「アイスランド」と名付けたと伝えられます。
一方の「グリーンランド」は、「赤毛のエイリーク」と呼ばれたノルウェー出身(アイスランド生まれの説も有)のエイリーク・ソルヴァルズソンという人物により命名されたと伝えられます。彼の父親は960年頃に一家でアイスランドに移住、その後エイリークもアイスランドで農場経営などをしていましたが、982年頃に幾つかのトラブルに巻き込まれて殺人を犯し3年間の国外追放とされてしまいます。彼はその時にグリーンランドを探索、入植したとされています。グリーンランドには既にアメリカ大陸から渡ってきた人々が住んでいましたが、「赤毛のエイリーク」はその地を「グリーンランド」と呼んで、アイスランドに戻った時には人々にその魅力を吹聴したそうです。
一説には「緑の土地」と名付けることで、人々により魅力的に思ってもらう為に。また別の説では彼が「グリーンランド」に入植した時期は、「中世の温暖期」と呼ばれるヨーロッパが温暖であった時期であり、実際に彼が目にしたグリーンランド南部の海岸地帯は緑に覆われていたために「グリーンランド」と名付けたともいわれています。ちなみに、気候変動などが主な要因といわれていますが、15世紀頃に北欧系の入植地は破棄され、その歴史は一度途絶えています。現在、グリーンランドに暮らすのはエスキモー系の先住民族であるカラーリット、北欧系との混血、デンマーク人などです。
グリーンランドの基本情報:
面積:約2,166,086平方キロメートル(世界第11位)
人口:56,081人(2020年4月現在)
公用語 グリーンランド語
通貨:デンマーク・クローネ(DKK)
最高峰:ギュンビョルン(Gunnbjørn) 標高3,694メートル
主な産業:漁業・加工業(エビなど。輸出の約87パーセントを占める)
グリーンランドって国なの?
「北極圏の巨大な島」という漠然としたイメージが先行して、「グリーンランドは国なのかそうでないのか」という基本的な部分すらも曖昧な印象を持たれてしまいがちな「グリーンランド」ですが、それもそのはず、グリーンランドは国であって国でないのです。どういうことか詳しくご説明しましょう。
まず、グリーンランドは長年にわたりデンマークの海外植民地という扱いでした。中世の時代、デンマークは有数の海運王国であり、北欧最大の海洋国家として君臨。カルマル同盟の元、ノルウェーさえも取り込んで強大な王国を築き、アフリカや西インド諸島などへも勢力を伸ばしていました。グリーンランドにも人を送り、1721年以降、徐々にグリーンランドをデンマークの植民地としていきました。とはいえ、グリーンランドに入植したデンマーク人は人数の上でも先住民に比べて圧倒的少数であり、グリーンランド全域がデンマークの支配下に入ったのは1917年以降といいます。その後、第二次世界大戦を挟んで1953年にようやくデンマーク本国の県と同じ扱いとなりました。さらにグリーンランド住民による独立の気運の高まりとそれに伴う運動の結果、1979年にグリーンランド自治政府が発足します。植民地から正式なデンマーク自治領となったのです。ここで「自治領」について少しだけ補足すると、「自治領」とは主権国家の元、通常の地方自治よりもさらに強力で高度な自治を行う「自治行政区画」のこと。具体的には、例えば1985年、グリーンランドは、デンマーク本国が加盟していたEC(EUの前身)から脱退しています。日本の都道府県の一つが対外的に、国とは違う独自の動きをすることを想像すると、グリーンランドの状況が少し理解ができるかもしれません。現在、デンマークの主権の下、フェロー諸島と共にグリーンランドは「対等な立場」で「デンマーク王国」を構成しています。
グリーンランドの主な都市・町・集落
グリーンランド西部
◇ヌーク(Nuuk(旧称:ゴットホープ Godthåb)グリーンランドの首都・最大都市
◇アシアート(Aasiaat)グリーンランドで4番目に大きな町
◇アタミック(Atammik)
◇イルリサット(Ilulissat(旧称:ヤコブスハン Jakobshavn)現在の町の基礎は1741年に作られた グリーンランドで3番目に大きな町 町の名はグリーンランド語で「氷山」または「氷塊」の意 町の傍にあるイルリサット氷河(イルリサット・アイスフィヨルド)は世界遺産に登録されている
◇カンガートシャク(Kangaatsiaq)グリーンランドで16番目に大きな町
◇カンゲルルススアーク(Kangerlussuaq(旧称:センレストレムフィヨルド Søndre Strømfjord)グリーンランドで17番目に大きな町
◇マニートソック(Maniitsoq) グリーンランドで6番目に大きな町
◇ パーミウト(パーミュート)(Paamiut)(フレゼリクスホープ Frederikshåb)グリーンランドで10番目に大きな町
◇ カシギアングイト(Qasigiannguit)グリーンランドで12番目に大きな町
◇ ケケルタルスアク(Qeqertarsuaq)グリーンランドで14番目に大きな町
◇シシミウト(Sisimiut)グリーンランドで2番目に大きな町
◇ウペルナビク(Upernavik)グリーンランドで13番目に大きな町。人口1073人。
◇ウマナック(Uummannaq)グリーンランドで9番目に大きな町
◇カンガーミウト(Kangaamiut)(旧称: Gammel Sukkertoppen)人口304人。グリーンランドで20番目に大きな町
◇アクナーク(Akunnaaq)アシアートの東23キロメートルの場所にある町。1850年に作られた。
◇アッツ(Attu)
◇イカミウト(Ikamiut)
◇イケラサク(Ikerasak)
◇イリマナク(Ilimanaq)
◇イロルスイト(Illorsuit)
◇クッロルシュアク(Kullorsuaq)ウペルナビク諸島の最北の集落でグリーンランドで18番目に大きな町
◇ニアコルナールスク(Niaqornaarsuk)
◇ニアコルナト(Niaqornat)
◇ヌーガートシュアク(Nuugaatsiaq)
◇オカートスト(Oqaatsut)
◇カールシュト(Qaarsut)
◇ケケルタク(Qeqertaq)
◇ケケタット(Qeqertat)
◇サカック(Saqqaq)
◇サビシビーク(Savissivik)
◇シオラパルク(Siorapaluk)
◇タシウシャク(Tasiusaq)
◇ウクシサット(Ukkusissat)
◇ウペルナビク・クヤレック(Upernavik Kujalleq)人口204人。ケケルタク諸島における交易の拠点として1855年に作られた町。
グリーンランド東部
◇タシーラク(Tasiilaq(旧称:アンマサリク Ammassalik)人口約2000人のグリーンランド東海岸最大の町(グリーンランドで7番目に大きな町)
◇イトコルトルミット・イットコルトールミート(Ittoqqortoormiit(旧称:スコルズビスーン Scoresbysund)グリーンランドで19番目に大きな町
◇クングミュット(Kuummiit)
◇クルスク(Kulusuk) (旧称:Kap Dan)
◇ティニテキラク(Tiniteqilaaq)
◇セルミリガーク(Sermiligaaq)
◇イセルトック(Isortoq)
◇カンギリングイト(Kangilinnguit) (旧称:グレネダール(Grønnedal))
◇カピシリット(Kapisillit)
◇ケケルタルスアトシアート(Qeqertarsuatsiaat)(旧称:フィスケネセット(Fiskenæsset))
グリーンランド北部
◇カーナーク(Qaanaaq(旧:トゥーレ Thule)グリーンランドで15番目に大きな町
◇ノード(Nord)
◇シオラパルク(Siorapaluk)世界最北の集落の一つ。植村直己が北極へ犬ぞり探検に出かける前に9カ月ほど滞在し、犬ぞりや狩猟の技術を学んだことで知られる。
グリーンランド南部
◇ナルサルスアーク(Narsarsuaq)観光産業が盛ん。野生生物や宝石関連ツアー、氷河ツアー、飛行場博物館など。
◇アルサック(Arsuk)人口156人。その名前はグリーンランド語で「愛される場所」を意味する。
◇ナルサーク(Narsaq)人口約1350人のグリーンランドで8番目に大きな町。市庁舎、スーパーマーケット、教会のほか、インターネットカフェや病院もある。2004年にはグリーンランド最初の醸造所である「グリーンランド・ブリューハウス」も設立された。
◇カコルトク・カコトック(Qaqortoq)人口3050人のグリーンランド南部最大の町(グリーンランドで5番目に大きな町)。先史時代から人が住んでいたといわれる
◇ナノルタリーク(Nanortalik)グリーンランドで11番目に大きな町
◇イビッツート(Ivittuut )
◇カッシミウト(Kagsimiut)
◇イガリク(Igaliku)
グリーンランドへの行き方:
グリーンランドへは主に、アイスランドから飛行機で行く方法と、デンマークから飛行機で行く方法の二通りの行き方があります。(訪れるシーズンによって便の数や運航状況などは変わってきますので注意が必要です。)
グリーンランドの南西にあるカンゲルルススアーク空港がグリーンランド最大の空港となっており、カンゲルルススアーク空港とデンマークのコペンハーゲン空港をグリーンランドの航空会社「エア・グリーンランド」が結んでいます。「エア・グリーンランド」はコペンハーゲンのほか、アイスランドのレイキャビク空港、および、グリーンランド国内のアシアート空港、イルリサット空港、シシミウト空港、ナルサルスアーク空港、ヌーク空港、マニートソック空港、ネレーリット・インアート空港などを結んでいます。また、アイスランドの航空会社「エア・アイスランド」がカンゲルルススアーク空港と、アイスランドの首都レイキャビクのケプラヴィーク国際空港を結ぶ便のほか、グリーンランド国内のイルリサット空港を結ぶ便を運航しています。
また、エア・アイスランドがクルスク空港およびヌーク空港へ、レイキャビクから飛行機を飛ばしています。
そのほか、グリーンランド南部にあるナルサルスアーク空港や、西部にあるイルリサット空港へ、エア・グリーンランドがコペンハーゲン空港から季節便を、また、エア・アイスランドがケプラヴィーク国際空港から季節便を飛ばしています。
あまり一般的ではないですが、番外編としてイルリサット空港へカナダからチャーター便で行く方法もあります。詳しくはAir NunavutAir Nunavutへ。
グリーンランド内の交通:
面積が日本の約5.7倍という広大な島であるグリーンランド内の主要な移動手段は飛行機になります。「エア・グリーンランド」がグリーンランドの各都市間を結ぶ飛行機やヘリコプターを運航しています。島の大きさもさることながら、グリーンランド内の都市間の陸上交通を難しいものにしているのは雪や氷の多い地表に加え、フィヨルドが多く海岸線が入り組んでいる事。その為、都市間交通のメインは空の便となるのです。(離島との間を中心に、旅客や物資を運ぶフェリーも本数は少ないながら運航されていますが、時間がかかることと本数の少なさで予定にかなり余裕がある場合向き。)
グリーンランドの風景 町や村の風景とグリーンランドの自然風景
グリーンランドの都市の風景と自然風景