ノルウェーのエネルギー事情
公開日:2023年5月26日 最終更新日:2023年5月26日 Hokuo Guide
西ヨーロッパで最大の石油・ガスの生産国 ノルウェー
ノルウェーは、西ヨーロッパで最大の石油・ガスの生産国で、一次エネルギー自給率は680パーセント以上と世界一を誇ります。
しかし、ノルウェーのエネルギー事情がちょっと変わっているのは、自国で使用する分の電力はほぼ水力発電(欧州最大の水力発電国)でまかない、石油やガスは輸出に回していること。
日本ではあまり知られていないことですが、資源大国ノルウェーはヨーロッパの石油埋蔵量の6割、天然ガス埋蔵量の5割を有しており、世界第5位の天然ガス生産国、世界第14位の原油生産量(2019年度)なのです。
(ノルウェー政府は、2021年6月に長期のエネルギー戦略を発表、水力発電から、水素や洋上風力発電に注力する一方で、2050年までおよびそれ以降も、石油とガスの採取は継続していくとしています。)
首都オスロでは、2050年までに温室効果ガスをゼロにする目標を掲げ、気候予算や交通政策など、先進的な環境施策を打ち出しています。2022年にはノルウェーで販売された新車の実に80パーセントがEV、いわゆる電気自動車でした。2025年までに新車販売におけるゼロエミッション車の比率を100%に高める(ガソリン自動車の販売を終了する)ことも目指しています。
これらのことがアメリカなどよりも早く達成されるのは、ノルウェーの人口がおよそ540万人(2021年度)ということも勿論あるでしょう。巨大な国アメリカでは、電動自動車を普及させるにしても充電施設など設備を充実させるだけでもどれほどのコストと時間がかかるか計り知れません。その点、ノルウェーくらいの人口であれば、整備もしやすく導入も早いでしょう。(それでも、充電場所が空くのを待たなければいけないのでイライラする人も多くなっている、という話もあります。)
今や首都オスロをはじめ、ノルウェーの大気はガソリン車から放出される排気ガスが激減したことにより、綺麗になっているとか。一方で、人口は少ないながらも、IT産業、アルミ産業など、電力を必要とする産業がノルウェーでは盛んであり、1人当たりの電力消費量は23,660kWhと、世界有数の電力消費国でもあるのです。
このように、「自国の空気はクリーンに、エネルギーは再生可能で自然由来のものへ」と移行を目指しつつも、かつては主に魚介類などを輸出するヨーロッパの中でも決して豊かな国とはいえなかったノルウェーが、世界でも有数の富裕国となった最大の理由である「石油・天然ガスの生産と輸出」を簡単にやめることは出来ない、というジレンマに陥っているのです。日本でもエネルギーは、特に東日本大震災以降の原発稼働の是非などもあり難しい問題ではありますが、ノルウェーでも重要なトピックとなっているのです。